まるで闇を抱えるように、全てを洗い流す雨

愛する空間。少し冷たくなった風にゆれる草木。窓から見える外の風景はまるで時間が止まったようで、段々畑が見え、そこで農作物を育てている農家の人たちが見えた。
それは穏やかで、眠気を誘うような静かな時間だった。冬になると雨が降る時期が多くなり、山の近くということから、山から吹き抜ける風が肌を刺すように痛かった。
コートを着込み、マフラーを巻いて出かけるけれども、外の空気は存外に冷たく、身体を冷やしていく。また、近くには川が流れており、静かにサラサラと流れる水は澄んでおり、橋から覗くだけでも小魚の存在が確認できる程の透明度だった。
私はそんな空間が大好きで毎日変わりゆく自然に全くもって飽きることはなかった。だけども、雨が長く続いた時、いつもの川の静けさはなりを潜めドゥドゥと流れる水は私が知っているものとは違い、砂で濁り濁流となって流れていく。
普段は優しい川もその時ばかりは牙をむいたように勢いよく流れていく。今、この川辺に降りたら川の流れに負けて流されてしまうだろうと思える勢いがあった。あんなに普段は美しい川も時折牙をむく。生きとし生けるものに対して。
それが戒めであるかのように。いつだったか誰かが、夜の雨は闇を含んでいるから重いと言っていたような気がする。夜の雨はなぜ重いのか?そんな事わかるはずもないが傘をさして歩いていた私は唐突に傘をたたんで、空を見上げ見た。
降り注ぐ雨はしとしとと降っており、決して勢いよく降っているわけではなかったが、降り注ぐ雨は衣服を徐々に濡らし、重くしていく。雨雲に覆われた空からは空を見ることはできなかった。わかることといえばこの雨はまだやまないだろうということだけだった。夜の雨は闇を含み重みを増してまだまだ降り注ぐだろう。
私は願う。悲しみも怒りも、憎しみも苦しみも全て闇に封じ込めて雨となって降り注ぎ、この世の穢れをすべて洗い流してくれればいいのにと。
そう、雨を大量に含みいつもの優しい流れではなく、ドゥドゥと流れる濁流になったとしてもそれを全て洗い流してほしいと切に願った。服を濡らす雨はやむことなくしとしとと降り注いでいる。
人の悲しみを肩代わりするように・・・・。